青果部門で安定した利益を出すことは、容易ではありません。
なぜなら相場が変動するため、突然の価格高騰や暴落が起こりうるからです。
そのため、当初の値入率よりも実際の粗利率が大幅に下がってしまうことも…(もちろん、逆に粗利率が上がることもあります)。
このように、相場の影響を受けながらも粗利を取っていかなければなりません。
青果部門が目指すべき粗利率は23%前後だと言われていますが、なかなかそこまで到達させられないチーフも多いのではないでしょうか。
とはいえ利益が思うように取れない原因は、相場の影響だけではないのです。
実は店の担当者の行動にも、利益を取れなくしてしまっている原因があります。
それでは、青果部門で利益が取れない原因について、一つずつみていくことにしましょう。
割引するタイミングが悪い
商品を割引するタイミングはとても重要で、このタイミングしだいで利益を上げることにも下げることにもなります 。グロッサリーなど他の部門ですと、明確な賞味期限(消費期限)があり、割引するタイミングもマニュアルによって定められています。
いっぽう青果物には賞味期限や消費期限がないため、担当者によって割引するタイミングがまちまちになりがち。
割引するかどうかの基準は、各人の鮮度に対する意識によって変わりますからね。
また「できる限り割引せず、プロパー価格で売って利益を稼ぎたい」という考えの担当者もいるでしょう。
しかしギリギリまで割引を渋ったところで、結局売れずに廃棄するはめになるだけです。
商品を廃棄してしまえば一円にもならないどころか、むしろ仕入れた金額の分だけマイナスになってしまいます。
それならば、 少しでも鮮度劣化がみられた時点ですぐに割引して、さっさとお金に変えてしまう方がよっぽど利益になります 。
もし割引するタイミングが適切かどうかわからない場合は、他の部門の人たちに「この状態で割引したら、買う?」と聞いてみてください。
青果担当者は感覚がマヒしてしまっているため、少しくらいの傷みなら大したことないと思いがちですが、他部門の方たちは違います。
ふだん青果に関わっていない人に聞くからこそ、お客さまと同じ立場での意見を得られるわけなんです。
こうすることで、今まで割引するタイミングが早すぎたのか、遅すぎたのか?がわかるはずです。
商品が在庫過多もしくは欠品することが多い
商品の在庫過多や欠品は利益の機会損失につながりますから、極力避けなければなりません 。しかし青果部門での発注はその日の気候や気温に加え、相場にによって左右されるため、多くの担当者が難しいと感じるようです。
とはいえ自動発注だったり予測数が出る最新の発注システムを利用しているならば、発注数に悩むこともないでしょう。
残念ながら未だに多くのスーパーでは、まだまだ担当者が売れ数を予測して発注しなければなりません。
商品の動きをみて、的確に発注することが大切そのさい自らの経験とカンを頼りに発注する担当者もいれば、売れ数の前年比データ・市況データを活用して発注する担当者もいたりします。
ただふつうは、データという確かな数値を頼りに発注する担当者が多いですね。
データも見ずに経験とカンだけで発注すると、思ったより商品が売れずに在庫過多になってしまったり、逆に商品が売れて欠品する恐れがあるからです。
もしも 商品の在庫過多が起こると廃棄ロスの原因に、欠品が起こるとチャンスロスの原因 となってしまいます。
利益を上げたいのであれば、データを活用し、適切な数を発注して商品管理を行っていくことが重要 といえるでしょう。伝票や商品のチェックを怠っている
納品された商品は、早く売場に出さなければなりません。
しかし商品を売場に出すことを重要視するあまり、伝票や商品のチェックを怠ってしまっている担当者も少なくないようです。
商品が届いたら、まずは伝票をチェックすることから始めましょう。
伝票に記載されている商品と数が正しく合っているか、また商品に傷みはないかしっかりと確認してください。
確認した結果、以下のような事態であれば、すぐにバイヤーに連絡しましょう。
- 伝票に記載がない商品が混じっていた
- 記載の納品数よりも多かったり少なかった
- 商品が傷んでいた
なぜなら 伝票と実際の商品に相違があったり、傷みがあるのに連絡せずに放置してしまうと、店側が損をしてしまう からです。
たとえば伝票上の納品数より実際の納品数が少なかった場合ですと、お金は払っているのに商品が来ていない状態ですから、足りない分だけ払い損となります。
また届いたばかりの商品に傷みがあるものは、市場に返品し赤伝票を切ってもらわなければなりません。
もし返品処理をしないでいると、商品の仕入れ額がそのままマイナスになってしまいます。
忙しいなかでも 細かく伝票と商品のチェックをすることこそが、利益を上げる第一歩 だといえるでしょう。
納品された商品をすぐに売場に出さない
店に商品が到着したらすぐに商品を売場に出す、という当たり前のことが徹底できていない担当者もいるようです。
なぜ商品を早く売場に出さなければならないのか?という理由は、2つあります。
まずひとつ目の理由は、鮮度がどんどん悪くなってしまうからです。
青果物は生き物ですから、時間が経過するにつれて劣化していってしまいます。
冷蔵庫で保管していたとしても少しずつ傷みは進行していくのです。
傷みはじめてから売場に出しても、まともな価格では売れません。
ふたつ目の理由は、チャンスロスが発生してしまうからです。
チャンスロスとは機会損失ともいい、商品が欠品していたことによって、お客さまが購入するチャンスを逃してしまい生じるロスのことをいいます。
せっかく商品を買ってくれるお客さまがいても、肝心の商品が売場になければ売上にはなりません。
商品を早く出せば、そのぶんお客さまが手にとってもらえる可能性も高くなり、結果として利益にもつながっていく わけです。また商品を出さずに冷蔵庫に置いておくことは、在庫過多の原因にもなってしまいます。
以上のことからも、商品を置いておいても、何ひとついいことはないのです。
利益を上げるためにも商品が納品されたら、少しでも早く売場に出すように心がけましょう 。品物を出す優先順位が間違っている
いくら商品を早く出さなければならないといえど、適当に出していては利益につながりません 。その商品は今出さなければならないものかどうかという、優先順位を考えて出す必要があります。
品出しのさいはつねに優先順位を意識する 品出しする優先順位は、第一に広告の品・第二が定番品・第三はスポット商品 となります。まず、広告の品は最優先に出すようにしましょう。
広告の品が売場になければ大きなチャンスロスを起こしてしまいますし、なによりもお客さまからクレームが寄せられかねません。
次に定番の品を出して、売場をきっちり埋めていきましょう。
そのさいには、欠品している場所から出すようにしてください。
そして売場が完璧な状態に仕上がってから、最後に送り込まれてきたスポット商品を出せばいいのです。
広告の品が手薄になっているのにスポット商品を一生懸命出したり、欠品している商品そっちのけで売場に並んでいる商品の補充をしたりしないよう、気をつけましょう。
部下へ適切な指示ができていない
青果部門で利益を上げるためには、ムダがなく効率のいい作業を行うことも重要 な要素となります。ところが 部下に適切な指示ができていないがゆえに、ムダな作業を行ってしまっており、なかなか利益が上がらないというケースが多々あります 。
たとえば品出しのさいでも、優先順位を考えながら商品を並べていく必要があります。
優先順位がわかっていない担当者は、広告の品よりどうでもいい定番品を先に出していることも…。
そのような担当者には、上司が指示をしてあげなければなりません。
上司のほうから具体的に指示されなければ、どうすればいいのかわからないのです。
上司にはなかなか自分から聞けないというタイプの部下もいますから、積極的に指示をしてあげてください。
そうして 担当者全員が、利益を上げるために効率よく作業をし続けていれば、その成果はいずれ現れてくる はずです。
価格が指示売価よりも高すぎる・安すぎる
バイヤーが決めた指示価格、きちんと守っていますか?
もしかしたら在庫過多などの理由で、指示売価よりかなり安く売ることもあるかもしれません。
しかし 指示価格を守らず、自己判断で売価を高くしたり安くしたりすることは、会社にとって不利益になってしまう可能性がある のです。
そもそも 商品の価格はバイヤーが最適な値入率を考え、そのうえで売価を決定しています 。
もちろんそのさいには販売計画を立てて「この値入率でこの売価なら、最終的な粗利率はどれくらい取れるか」というところまで計算しているわけです。
つまり指示売価を守って販売すれば、販売計画通りの粗利率に到達できる見込みとなります。
逆にいえば、 指示売価を守らずに販売してしまった場合、計画していた粗利率に達成できなくなってしまいかねません 。
特に指示売価よりも安い値段をつけてしまうと、粗利率は低くなってしまいます。
もしも売価を下げるのであれば原価と値入率をみたうえで、自社が目指すべき粗利率を下回らない金額をつけるようにしましょう。
商品が最適な場所に置かれていない
商品の配置ひとつで、売上や利益は大きく変わります 。 商品の配置はバイヤーによって考えられているそのことを踏まえてバイヤーが棚割りを組んでいるため、店側が特に考えなくとも、つねに最適な売場になっているはずです。
ところが時間の経過とともに棚割りが乱れ、商品の場所がいつのまにか変わってしまったり、フェースが勝手に縮まったりすることも。
それでも定期的にバイヤーが売場をチェックして、そのつどきちんと棚割りを直してくれるのであれば問題ありません。
しかしバイヤーがあまり店に来れず、担当者任せになってしまっている場合は、なかなかきちんとした棚割りを維持するのは難しいものです。
欠品した商品の穴埋めをするために、一時的に商品の場所をずらして対応したまま、放置されてしまうことも珍しくありません。
また今売れる旬の商品にもかかわらず、冷蔵ケースの最上段に追いやられていたりなどということもあります。
店側で売場を変更するのであれば、できる限りバイヤーに相談をして、最適な売場にするにはどこになにを置けばいいのかの指示を仰ぐようにしましょう 。商品の選定が悪い
利益を得る手段は、当然ながら商品を販売することとなります。
それもただ販売するのではなく、ちゃんとその店で売れる商品を選ばなければ意味がありません。
売れない商品をいくら置いていても利益は上がりませんし、それどころかロスとなり損をしてしまいます 。また逆に 売れるものを置いていなければ、チャンスロスを生み出してしまう わけで…。
ロスを防ぎ利益を上げるためには売れる商品を置くことはもちろん、売れない商品は思い切って取り扱いをやめてしまうことが重要 なのです。とはいえ、いったい何が売れる商品で何が売れない商品なのか?というところが気になりますよね。
残念ながら、これが売れる・これは売れないとは一概に言えないのです。
店ごとに客層は異なっていますから、自分の店では何が売れるのか?売れないのか?をしっかり見極めなければなりません。
毎日売場と売上やロスのデータを見ていれば、売れる商品・売れない商品を突き止めることができるはずです。
自分で調べてみてもよくわからなければ、バイヤーに相談してみると、いろいろと参考になることでしょう。
青果部門で利益が取れない原因には、さまざまな要因が絡んでいるといえるでしょう。
そしてそれらの要因は連鎖反応を起こし、より悪循環となってしまっているのです。
よくありがちなのは、発注の精度が悪い→在庫過多もしくは欠品が起こる→指示売価よりも高い(安い)値段で販売するというパターンですね。
または、部下に適切な指示を出さない→納品された商品をすぐに出さないもしくは品物を出す優先順位が間違っている…というパターンもあります。
これらの要因の大部分は、担当者の考え・行動ひとつで改善できるものばかりです。
なかにはバイヤーからの送り込みが多すぎるなどといった、外部要因で利益が取れない事例もありますが、主な責任は店で作業をする担当者にかかってきます。
青果部門で利益を出すことは難しいわけですが、それでもうまく利益を出している担当者はちゃんといます。
現時点で利益が取れていない店の担当者は、いまいちど自分の店にはなにが足りないのか、どこが間違っているのかを見つめ直してみましょう。
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