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スーパーの惣菜は高粗利、だけど儲けは少ない?!-半額弁当は利益ゼロ?!-

バラ売り惣菜

スーパーは薄利多売で利益を取るのが難しい、とよく言われています。

そんなスーパーにおいて、高い粗利率を得ているのが惣菜部門です。

一人暮らしのサラリーマンや学生はもちろん、主婦もお世話になっているスーパーの惣菜。

みなさんもスーパーでは惣菜のひとつくらい、つい買ってしまっているのではないでしょうか?

特に夜、半額になったお弁当を目的に買い物へ行く方もいることでしょう。

半額のお弁当は家計にとってありがたい存在ですが、「こんなに安くて、利益はあるの?」と疑問に思ってしまいますよね。

しかし高い粗利率を取っているから、半額にしても利益が取れているのだろうと思ったら、大間違い。

みなさんが想像以上に、スーパーの惣菜は儲からないものなんですよ。

今回はなぜ惣菜部門は高い粗利が取れるのか、そのわりに儲けが少ない理由は何なのか、この2点について一緒にみていきましょう。


付加価値を反映した売価で高粗利

惣菜部門の粗利は店によりますが平均約40%と、スーパーの部門の中でもっとも高粗利となっています。

他の部門が約20~25%の粗利しかないことを踏まえると、いかに惣菜部門の粗利が高いかがわかるかと思います。

これほど 高い粗利が惣菜部門で出せる理由は、ずばり付加価値を反映した売価となっているから です。

惣菜における付加価値とは、自家製・作りたて・一般家庭では調理が難しい料理などを意味します。

揚げ物調理中揚げ物は家庭での調理が難しく、付加価値も高い

付加価値のある商品をお客さまに提供するにあたっては、多くの商品が揚げたり焼いたりなどの調理、またパック詰めなどの加工が必要となります。

たとえば自家製のお弁当の場合、付け合せのキャベツからメインの唐揚げやとんかつに至るまで、すべて手作業で下ごしらえと調理を行っています。

冷凍の唐揚げやとんかつを揚げて出せば手間はかかりませんが、それではコンビニのお弁当と大差なく、とても付加価値がある商品とは言えません。

つまり 売価に付加価値を反映するということは、作業の手間賃を原価に上乗せしているといっても過言ではありません 

そして商品に付加価値をつけることができることこそが、惣菜部門の強みでもあり、利益を作り上げるうえでのキーポイントになっています。

その証拠に入荷した商品をそのまま出すだけの食品や日配品などの部門では、付加価値をつけることができず、たいして利益を得られていないのです。

高粗利でも儲けが少ない理由

惣菜部門は高い利益を作り出せる、唯一の部門となっています。

みなさんは当然、利益の分だけ儲けも多いのだろうと思っていることでしょう。

しかし実際のところは、純粋に利益として残る金額は少なく、たくさん儲かっているとは言いがたいのです。

惣菜部門が高粗利でも儲けが少ない理由として、以下の3つの理由が挙げられます。

それではこれらの3つの理由について、1つずつ詳しくみていくことにします。

人時生産性が悪く、人件費が高い

多くの加工作業を行わなければならない惣菜部門では、人時生産性の高さが非常に重要視されています。

人時生産性とは、従業員ひとりあたりが1時間にどれだけの粗利を出せるかの指標で、その数値は人時生産高として表されます。

わかりやすく言うなら、同じ作業量をより少ない人数でこなすことができるほど生産性が高くなり、人数が増えるほど生産性は低くなるわけです。

 せっかく高い粗利を出していても、人時生産性が悪いと人件費が高くつき、たいした儲けになりません 

そのため、 儲けを確実に残していくにあたって、人時生産性をどれだけ高められるかがカギとなります 

とはいえ、人時生産性を高めるのは容易なことではありません。

そのため人手を削減し人件費を浮かすという方法で、利益を確保しようとしている店もあります。

しかし生産性が低いまま人手を減らしたところで、商品の製造数が少なくなり、利益どころか売上まで落ち込んでしまうだけです。

ですから安易に人手を減らすのではなく、まずは人時生産性を高めていくことが大切となります。

作業のオペレーションを見直したり、不要な作業はカットするなどの努力次第で、いくらでも人時生産性を高めることはできるのですから。

ロス率が高い

惣菜部門が儲からない理由のひとつに、ロス率が高いということが挙げられます。

ロス率とは売上高に対するロスの割合を示すもので、ロスには値引ロスや廃棄ロス、不明ロスといった種類が存在しています。

それぞれがどのような意味を表しているのかは、下の表をご覧ください。

値引ロス 値引をせず、プロパー価格で売れたときの売上との差異を示す
値引額が大きければ大きいほど、この値引ロスも大きくなる
廃棄ロス 廃棄によって得られなかった売上との差異を示す
当然売上は0であるから、原価分がそのままマイナスとなる
不明ロス 値引きロス・廃棄ロスのいずれにも当てはまらない、原因不明のロス
この数値が高いときには万引きが疑われる

これら3つの要素をひっくるめたロス率としては食品部門では低く、生鮮部門で高い数値になる傾向があります。

生鮮部門のなかでも、惣菜部門は値引ロスも廃棄ロスも高く、ロス率は10%を超えることも珍しくありません。

これほどまでにロス率が高くなってしまう原因としては、実際の売れ数よりも製造しすぎであったり、値引するタイミングが適切でないということが考えられます。

とはいえ 惣菜部門は商品の特性上、どうしてもロス率が高くなるのは仕方ない ものなのです。

廃棄ロスを恐れて製造を少なく抑えてしまえばチャンスロスになりますし、値引ロスを減らそうと極力値引しなければ、結局売れずに廃棄ロスになってしまいます。

つまり 惣菜部門はロスが出る前提で、それ以上の利益を出すことが求められる というわけです。

ロス率を下げようとするより、人時生産性を上げて人件費を減らすことを考えたほうがいいかもしれません。

半額で売れても利益はほとんどない

お客さまからすればありがたい半額の弁当やおかずですが、店からすればできるだけプロパー価格で購入してもらいたいのが本音です。

値引きされたお弁当値引率が高くなるほど、利益は残らなくなっていく

というのも 半額で売れたところで、いくら粗利率が高くとも利益はほとんど残らない からです。

利益がほとんどないとわかっていながらも、半額の弁当や総菜を販売し続ける理由は2つあります。

まずひとつ目は、他の商品をついで買いしてもらうためです。

そう、 はじめから店は半額の弁当・惣菜で利益を取ろうだなんて思ってはいません 

他のプロパー商品をついでに購入してもらうことで、利益につなげようという考えなのです。

実際のところ弁当や惣菜だけを購入する方は少なく、多くのお客さまは店の思惑どおり、飲料やデザートといった商品も一緒に購入されています。

要は半額の弁当や惣菜は、客寄せパンダのような存在であるわけなんですね。

ふたつ目の理由としては、 利益は取れなくとも売上にはなる からということが挙げられます。

半額の弁当や総菜が売れたところで利益はほぼ残らないわけですが、売れた分は売上金額としてカウントされます。

捨ててしまえば利益どころかマイナスになり、廃棄ロスが高くなるだけですから、半額でも売れてくれればありがたいと店は思っているのです。

しかし、 利益のことを考えるならせいぜいが20%引きが限度で、それ以上値引してしまうと儲けにはなりません 

そのため早い時間から5%や10%といった少額の値引をして売りつくし、利益が出るように努力している店も。

少額の値引ではお客さまから購入してもらえない、というのであれば、商品の製造数や製造を行う時間帯も踏まえて考え直す必要があるかもしれません。


惣菜部門が高い粗利である理由は、仕入れた材料に加工の手間を加えている(付加価値をつけている)からとなります。

とはいえ高い粗利が取れる=たくさん儲けがあるというわけではありません。

そもそも儲けが出るのは、商品が値引されずプロパー価格で売れた場合に限ります。

値引で売れたり、廃棄してしまえば利益は残らないわけです。

商品の製造を少なくすれば値引せずとも売り切ることはできますが、そうなると今度はチャンスロスが発生してしまいます。

お客さまが購入したくとも売場に商品がない事態だけは、店は避けなければなりません。

そのため値引や廃棄する覚悟で商品が売り切れることのないよう、多めに製造しているのです。

商品を製造するには手間がかかり人手が必要となりますから、当然人件費もかさんでくるわけで…。

しかし、いくら高い粗利で利益を出しても、人件費の負担のほうが大きく儲けが残らない事態に陥っている店も少なくありません。

そこで重要となるのが、いかにして最小限の人員で最大限の生産性を上げるか、ということになります。

従業員一人ひとりの人時生産性を高めれば、ムダな人件費を削ることができるようになり、その結果として利益も残ることにつながるというわけです。

現に人時生産性を高めるための策として、アウトパック(外注品)の取り扱いを広げる店も出てきています。

アウトパックであれば、食品や日配品のように入荷したものをそのまま並べるだけですみますから、製造の手間もかかりませんし人手も不要となりますからね。

ただしアウトパックに頼っていては付加価値が出せず、価格で勝負するしかなくなってしまいますし、スーパーの惣菜である必要性も見いだせません。

やはり手作りや作りたてというのがスーパーの惣菜の存在価値でありますし、お客さまもそれを求めているわけです。

ですから、アウトパックに頼らずに正攻法で人時生産性を高めていく必要があるといえるでしょう。