棚卸しは、スーパーなど小売業において必須かつ重要な作業です。
つまり小売業で働く従業員は、棚卸し作業を必ず行う必要があるということになります(業者に委託させているところもありますが)。
ですから小売業、とりわけスーパーで働こうかと考えている方は、棚卸しはどんな作業なのか気になっていることでしょう。
しかし棚卸し作業の詳細について、あらかじめ教えてくれるところは少なく、実際に働いてみるまでわからないことが多いもの。
そこで今回は棚卸しについて不安や疑問を抱いている方へ向けて、その目的や時期また方法について紹介していきます。
最近スーパーで働きだしたばかりという方も、棚卸しについてあらかじめ知っておくことで、スムーズに対応することができることでしょう。
棚卸しの目的
棚卸しという言葉は知っていても、何の目的で行われるのかまではよく知らないという方も少なくないはず。
店舗運営においてとても重要な棚卸しですが、その目的は2つ挙げられます。
利益を正確に把握する
棚卸しを行う第一の理由としては、利益がどれくらい出ているのかを正確に把握することといえるでしょう。
そもそも小売業の儲けというのは、仕入れた商品に利益を上乗せして販売することで生まれるものです。
ですから、 商品の仕入れ数・粗利益率・売価・販売数といった項目が利益を算出するうえで重要な項目 となっているわけです。
もちろんPOSデータやストコンを見れば、各商品についての基本的なデータは簡単に知ることができます。
ただし POSデータやストコンの数字は、必ずしも正確とは言い切れません 。
なぜなら内引きや万引きといった不正が行われていたり、レジの操作ミスで同じ商品が複数通されてしまっている可能性があるからです。
しかし 実際の在庫数とデータ上の仕入れ数・販売数を突き合わせれば、限りなく正確な数値を調べることが可能 となります。
ある商品を10個仕入れて売場に出し、そのうち6個が残っている状況だとしましょう。
このとき売場からなくなっている4個の商品は、通常なら売り切れたと思うはずです。
そして売上データを見ると…なんと3個分しか登録が上がってきていないではないですか!
4個売り切れたはずなのに、データに登録されていない1個はどこへ消えてしまったのでしょうか?
そこで考えられるのは、商品が万引き(あるいは内引き)されてしまったということです。
このようにふだんデータしか見ていないと、このような万引きでの損失を見つけることは難しくなります。
逆にレジのさいに同じ商品を2度打ちしてしまうなどで、実際の数よりも多くデータに登録されてしまうこともあります。
この場合も売場とバックヤードの在庫を数え、データと照らしあわせることによって、正しい数値を導き出します。
以上の例を見てもわかるように 正確な数値(特に利益)を把握するためには、必ず棚卸しをしなければならない といえるでしょう。
店・部門ごとの優劣を明確にする
棚卸しで正確な利益率や売上金額などのデータを出したら、はい終わり。…というわけではありません。
実は 棚卸しのデータというのは、店や部門ごとの優劣をも明確にしてしまう ものなのです。
たとえば店全体のなかで一番利益率が高くて儲かっている店、部門全体のなかで一番在庫日数が低くて商品の回転が速い部門、など。
データを見れば、どの店・部門がどの項目で優れているのか劣っているのか一目瞭然。
管理職はデータを見て、改善策を考えている問題がある店や部門は、当てはまる部分を改善をしていくことになっていくわけです。
また 店や部門の優劣は、店長・バイヤー・部門チーフの評価にも大きく影響を与える もの。
高い利益を出せているようであれば評価が上がりますから給与UPにも期待が持てますし、安定していい成績を残せているならば昇進も見えてきます。
逆に悪い成績を出してしまうと、マイナス評価になってしまいかねません。
なかには小細工をして数値をごまかそうとする人もいるようですが、そんなことをしてもデータを精査すればすぐにバレてしまいます。
数字の改ざんを行い発見された場合には、減給や降格などといった処分が下る可能性があります。
不正は絶対に行わないようにしましょう。
ちなみに会社ぐるみで数値をごまかす行為は粉飾決算となり、れっきとした犯罪です。
もし自分の勤め先が棚卸しにおいて不正をしているようであれば、ブラック企業だと判断してもいいでしょう。
棚卸しの方法
とても重要な作業ではありますが、棚卸しは正直かなり面倒な作業なのです。
その方法は、シンプルに 商品の数をひとつ残らず正確に数え上げるだけ 。
売場に陳列されている商品はもちろんのこと、バックヤードの在庫もしっかり数えなければなりません。
数えたら専用の端末に打ち込みをして、本社にデータを送信します。
そう、 棚卸しの作業は商品を数えるだけではなく、データの打ち込みも含まれる というわけなのです。
ですから基本的には店の従業員が棚卸しを行うわけですが、専門の業者に作業を委託している企業もあったりします。
棚卸を行う時期・頻度
棚卸しは店内にあるすべての商品を数えなければならず、時間がかかる大がかりな作業となっています。
多くの企業では 自社の決算月(一般的には3月や9月)に合わせて棚卸しを行う としています。
決算は年に必ず1度あるものですから、少なくとも年1回は棚卸しが行われていることになります。
しかし会社によっては中間決算や期末決算などとして、年に2~4回程度決算を行っているところもあります。
中間決算や期末決算を設けている会社であれば、その決算に合わせて棚卸しも行っていることが多いですね。
つまり、 棚卸しを行う時期や頻度はその会社ごとに異なっている わけです。
さらにいうならば、店全体ではなく部門単体での棚卸しを命じられることもあり、もっと短いスパンで棚卸しが行われることもあります。
部門単体での棚卸しであれば半月に1回、毎月1回ぐらいのペースで行われていても珍しくない ですね。なかには、週1度というハイペースで棚卸しを行っているところもあるようです。
しかし決算時以外にも棚卸しを行うということは、経営面で何らかの問題を抱えている可能性が高いといえるのです。
その理由としては、以下の引用文をご覧ください(引用元はアパレルの棚卸しについて記されたページなのですが、根本的な考え方はスーパーでも同じです)。
決算日以外の棚卸は”実地棚卸”と言います。
では、なぜ実地棚卸を年に何度も行うかというと、帳簿上の棚卸(帳簿棚卸)とのズレが発生するからです。
(中略)
こうした、棚卸ロスはどんな組織にも発生します。
その要因としては、店頭での盗難。商品が何らかの要因で売り物にならない(B品)。等様々な要因が考えられます。
要は、このロス率が大きいから何度も実地棚卸を在庫を合わせる必要があると、棚卸の回数が多い組織は推測されます。
上記の内容を簡単にまとめると、 決算日以外にも棚卸しを行う理由は、帳簿上の数字と実際のデータがズレてしまう原因を探るため ということになります。
その原因を改善することこそが、棚卸しをする大きな目的であるといえるでしょう。
従業員の本音としては、面倒だからできるだけやりたくない棚卸し。
ただ数えるだけといっても正確さが求められますから、とても気疲れするんです。
正直、「今時わざわざ手作業でひとつひとつ数えるなんて、時代遅れだなぁ」と思うこともあります。
しかし棚卸しを行うことによって初めてわかる、新たな発見もあります。
特に毎週、毎月などと高頻度で棚卸しを行っていると、商品の売れ行きの良しあしを自分の肌で感じられるようになってきたりします。
たとえば長期間売れ行きがよくない商品に対しては、商品の場所を変更してみたり、発注数を減らしたりといった対策をとらなければなりません。
そのような対策をとることは、店の利益や売上をUPさせるためには必要不可欠となるわけです。
つまり実際に売場やバックヤードに出て商品を数えることは、自部門の問題を発見し解決策を導き出すことにつながっていく、といえるでしょう。
なにせ事件は会議室で起こっているのではなく、売場で起こっているわけですからね。
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