柿は、とても当たりはずれの多い果物です。
渋くて食べられなかったり、種を取り出すのが面倒だったり…甘くて種のない柿があれば、是非選びたいところですよね。
そんな甘くて種のない柿、実はあるのですよ。
ここでは甘柿と渋柿についてや、柿の代表的な品種について紹介します。
甘柿と渋柿の2種類に分けられる
柿とは、柿の木に生っている実の部分を指します。
中国から日本に伝来したといわれており、日本からさらにヨーロッパやアメリカに伝えられていきました。
日本固有の果物のイメージがある柿ですが、欧米でも知られているとは意外とグローバルな存在なんですね。
柿の渋みを決める、タンニンと種の存在
甘柿と渋柿の紹介に入る前に、渋みを感じるメカニズムについて解説していきます。
まず、柿の渋みの元となっているのは「タンニン」という物質になります。
この タンニンが口の中で溶けだすことによって、渋みを感じる のです。
しかし、渋柿は渋みを感じるのに、甘柿が渋みを感じないのは何故なのでしょうか。
その理由は… 甘柿は成熟するにつれて、タンニンが不溶性(溶けださない)に変化していく からです。
一方 渋柿は、渋抜きをするか完熟させないと、いつまでたっても渋いまま なのです。
種があると、タンニンが凝固し甘くなる
…とここで、もう1つ重要な要素が出てきます。
それは、種の存在です。
種からは植物ホルモンが放出されており、この植物ホルモンは柿の成熟を促し、タンニンを凝固させる作用がある のです。筆柿など一部の柿では、タンニンが不溶性となり凝固した証として、果肉にゴマ(黒い斑点)が表れます。
ただし、種がある=甘いというわけではありません。
種の有無に関係なく甘い柿(完全甘柿)や、渋い柿(完全渋柿)が存在 していますから、その点は注意しなければなりません。…と、完全甘柿だとか完全渋柿だとか、見慣れない言葉が出てきましたね。
実は甘柿と渋柿はさらに細分化されており、完全甘柿・不完全甘柿・完全渋柿・不完全渋柿の4種類となっています。
それでは、それぞれについて詳しくみていきましょう。
完全甘柿の代表的品種
完全甘柿は、種の有無に関係なく甘い柿 です。種があるかどうかは品種によって異なりますが、甘さを求めるなら、完全甘柿を選べば間違いないでしょう。
主な品種は、富有柿や次郎柿となっています。
富有柿
富有柿は数多ある柿の中でも、最も多く生産されている柿 となっています。形が丸みを帯びた四角形で、ふっくらしています。
とろけるような柔らか食感に、たっぷりの果汁と強い甘み 。まさに、万人受けする柿だといえるのではないでしょうか。
ただし、種があります。
次郎柿
富有柿と並んで、甘柿の代表的な品種 となっています。見た目は平核無柿によく似ており、四角張っていてやや大きめです。
果汁は少なく果肉も硬め、種はほとんどありません 。種があるのが嫌な方は、富有柿よりもこちらを選んでみてはいかがでしょうか。
不完全甘柿の代表的品種
上記で紹介した富有柿や次郎柿は完全甘柿であり、熟せば甘くなる性質を持っている柿となります。
対して 不完全甘柿は、熟しても渋みが残ることがある(不完全な)柿 となっています。
その渋みが残っているかどうかは、種の存在が関係してきます。
種があれば、成熟しタンニンが凝固するのですが、肝心の種がなければ、渋みが残ったままとなってしまいます。
種があるかどうかは外見からは判別できませんから、当たり外れが大きい柿だといえるでしょう。
ただ、 最近は選別機で渋いものをより分け、渋抜きされたのち出荷されている ようなので、店頭に並んでいるもので渋いものはないと思います。
自家栽培などで食べる場合は、渋いものに当たってしまうかもしれませんね。
代表的な品種は、筆柿です。
筆柿
筆柿の名前の由来は、形が毛筆の筆先に似ているからという、そのままのネーミングです。
別名・珍宝柿ともいいますが、この名前はとても人前で言えませんね…笑
ちなみに 中の果肉にゴマ(黒い斑点)があれば、甘みが出ている証拠 となります。
何故なら、このゴマはタンニンが固まったものだからです。
タンニンが可溶性だと渋みを感じると前述しましたが、この場合凝固され溶けだすことがなくなっているというわけです。
完全渋柿の代表的品種
種の有無に関係なく渋いままの柿は、完全渋柿 に分類されます。渋抜きをしないと生食できませんが、完全渋柿の多くは主に干し柿やあんぽ柿といった加工に用いられることが多くなっています。
主な品種は、西条柿です。
西条柿
紀元前13世紀頃(およそ800年前)には、既に存在していたという、歴史ある柿です。
現代では渋抜きをして生食用としても用いられていますが、昔は専ら干し柿に用いられていました。
渋抜き後は甘くなりますが、すぐに柔らかくなり日持ちしませんので要注意 です。不完全渋柿の代表的品種
完全渋柿が種の有無に関係なく渋いのに対して、 不完全渋柿は種があれば、種の周辺のみ甘くなる という性質を持った柿になります。
代表的な品種は平核無(ひらたねなし)柿ですが、この柿には名前の通り種がありません。
種がないので甘くするためには完熟するまで待つか、渋抜きをするしかありません。
平核無柿
種無し柿として有名 。店頭でも「たねなし柿」と表示されていたりします。 種がないため、甘くさせるための渋抜きをしてから出荷される のですが、渋抜きすることをさわすとも言うため、「さわし柿」と呼ばれることもあります。
様々な地方で生育されており、その地方によって「おけさ柿」「紀の川柿」「庄内柿」などと独自の名称がついています。
形は四隅が若干丸っこい四角形で、平たくなっています。
(だから”平”たねなし柿なのか?謎)
甘くジューシー、ねっとりまろやかな食感、さらに種もないので人気が高い 柿です。
主な産地
柿全体でみると、奈良・和歌山・福岡が生産地TOP3で、なかでも奈良は生産量日本一 となっています。これらの生産地に共通しているのは、西日本つまり温暖な地域であるということです。
品種別にみても、富有柿は奈良や福岡、次郎柿や筆柿は愛知、平核無柿は和歌山、西条柿は島根など中国地方となっています。
そう、ここで挙げられているのは全て西日本の地域なんですね。
何故、これほど西日本に産地が集中しているのかといいますと、柿の性質に理由があります。
寒冷地は柿の生育には不向きで、かつ生育できても渋柿しかできません。
甘い柿を作るには、温暖な気候が不可欠 というわけなのです。
というわけで、柿の主な産地は奈良を中心とする西日本ということになります。
鮮度チェック方法
品種に関係なく、柿は鮮度チェックが容易な果物となっています。
見た目と触った時の感覚で、ほぼ劣化品かどうか見極めることができます。
まず、 見た目で色が他のものより濃くなっているものは、熟している(鮮度的には劣化) ということになります。
また 触った時にぶよぶよしているものも、鮮度が落ちています 。
いずれにせよ柔らかく甘めの柿が好きな方なら、むしろそのような柿を買っていただく方がいいかもしれませんが、どうしても鮮度の点では劣化品となってしまいます。
柿って売場で見ているだけでは、なかなか違いがわかりにくいですよね。
でも、このページを見たあなたはもう大丈夫!
種がなく甘い柿を選びたい場合は、”完全甘柿”もしくは”さわし柿”と表記されたものであれば間違いなし!
個人的には平核無柿や次郎柿が、種もなくおすすめです。
富有柿も捨てがたいのですが、いかんせん種があるのでその点さえ気にならなければ、是非選んでみて下さい。
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