スーパーの風物詩でもある詰め放題、どれだけ入れても一袋いくらでとてもお得に感じますよね。
しかし、物事には必ず裏側が存在しています。
今回は、なかなかお客さまが知ることのできない、スーパーの詰め放題の裏側について紹介していきます。
この記事を読むと、詰め放題への見方が変わってしまうかもしれませんよ…。
利益は度外視!詰め放題は客寄せイベント!
詰め放題では、多くのお客さまが必死に商品を詰めている姿が印象的となっています。
なかには袋から飛び出るほど商品を詰め込んでいるお客さまもいますね。
しかし、こんなにたくさん商品を詰められては正直利益は出せません。
むしろ、詰め放題で利益を出そうと考えている店なんて存在しません。
なぜなら 最初から詰め放題は利益度外視で行う客寄せイベントとして考えられているからです 。
一点でも多くの商品を買ってもらうのが目的そして詰め放題目当てで来店したお客さまに、定番品―――つまり通常価格の商品を買ってもらうことを一番の目的としているのです。
定番品は粗利が取れるような価格設定となっているため、 定番品をついでに買ってもらえれば、ちゃんと店は利益を取れる ということになります。
このような手法は何も詰め放題に限ったことではなく、特売品で集客し定番品を購入してもらうという形で通常の営業スタイルにも表れています。
詰め放題の野菜は土物が多い!
詰め放題は利益度外視とはいえ、できる限り利益を取りたいと店側は考えています。
そこで重宝されるのが、じゃがいも・にんじん・たまねぎといった土物野菜になります。
なぜこれら土物野菜がよく詰め放題に選ばれるのか、その理由はいろいろあります。
それでは順番に見ていきましょう。
粗利が取りやすい
土物野菜は他の野菜に比べると相場変動が少なく、大量に安定した供給が可能となっているため、粗利も取りやすい のです。葉物野菜など、天候によって収穫量が大きく左右されるものは相場の変動が激しく、それにともなって売価も原価ギリギリか下手したら原価以下になることもあります。
原価と売価がほぼ等しいということは、当然利益もほとんど出ません。
計算式は売価-原価=粗利なので、38-20=18となります。
また、原価に対する売価の割合を示す粗利率も重視されます。
青果部門の場合は、約25%を最低でも目指さなければなりません。
上記の例を粗利÷売価×100=粗利率の計算式に当てはめてみると…18÷38×100=47.3となり、粗利率はなんと47%もあるということがわかります。
(ちなみに、通常土物野菜の原価や売価は、1個あたりではなく1箱あたりの規格で示されていることがほとんどです)
このように 土物野菜は利益を取りやすいので、よく詰め放題の野菜に選ばれる というわけです。
訴求しやすい
じゃがいもやたまねぎなど土物野菜は煮物にもよし、炒めてもよし、スープや生サラダにしてもよしの万能選手です。
これほど用途が幅広い野菜は、他にはないのではないでしょうか。
しかも、じゃがいももにんじんもたまねぎも、カレーやシチューでは一緒に使うことが多いですよね。
カレー1つにしても、多くの食材を買う必要があるということは、じゃがいもだけでなく、にんじんもたまねぎもついでに買う必要があるというわけです。
つまり、 お客さまに対して訴求がしやすい のです。
カレーやシチューにどうぞ!とカレーのルーやシチューのルーを置けば、立派な関連陳列となり、それらも購入していってくれる可能性が高まります。
たとえばピーマンやなす、きゅうりが詰め放題だったとしても、用途が限られていて、なかなか手を伸ばそうとは思いませんよね?
食材の関連性も低いですし、メニューとして訴求するのが難しいわけです。
お客さまが野菜を買う際には価格はもとい、今日の献立は何にしようか?という点を重視しています。
そのためカレーやシチューというふうに 具体的なメニューとして商品を訴求できれば、その分購入に繋がりやすくなる のです。
日持ちする
そして、土物野菜は訴求もしやすく、 何より日持ちするという点もメリット となっています。
野菜詰め放題では今すぐ必要でなくとも、お買い得感につられてついつい購入してしまうお客様が多くいらっしゃいます。
用途もろくに考えずに購入してしまうと、問題になるのは日持ちがするのかどうかという点です。
きゅうりやなすなどあまり日持ちしないような野菜だと、無理矢理使ってしまうしかありませんし、なにより詰め放題特有のお買い得感が薄れてしまいます。
家族みんながきゅうりやなすが好きなら、一度に使い切ることもできますが…そうでなければ、何日か日数をかけて、少しずつ使っていくしかありません。
そうこうしているうちに、せっかくたくさん詰め放題でゲットしたのに、腐ってしまい使い切れずに捨てるはめになってしまいます。
土物野菜ですと日持ちがするため、購入したからといってすぐに使う必要もなく、自分の好きなタイミングで使うことができます 。かたくて押しつぶれない形状
詰め放題では、できる限りたくさん詰めたいものですよね。
そんなときピーマンやきゅうりだと、押しつぶされて変形してしまったり、折れてしまったりする可能性があります。
いくら気にならないとしても、どうせ買うならきれいなものの方がいいですよね。
土物野菜でしたら、かたくてしっかりしているので、どれだけぎゅうぎゅうに詰めても変形することはありません 。 商品がつぶれないか折れないか気にせず、思い切り詰めることができるので、その点もお買い得感につながっている のではないかと思います。詰め放題の野菜はサイズが小さい?!
詰め放題の野菜に土物が多いわけですが、そのサイズにも注目してみてください。
実は 詰め放題用の野菜はふだんバラ売りもしくは袋詰めで売られているものよりも、サイズが小さいことがよくある のです。
具体的な例ですと、いつもなら売場に出す商品はMサイズもしくはLサイズのところを、詰め放題にはそれよりも小さなSサイズを用意する、というかたちになります。
とはいえ、大きさの違いは普段から買い物をしている人なら、すぐにわかってしまうでしょうね。
しかも小さいサイズの野菜はは大きなサイズのものよりも使いにくく、どちらかといえばあまり需要がありません。
ところが詰め放題では、小さい分多く袋に詰めることができるので、お客さまからすればなんだか得した気分に錯覚してしまいます。
しかしよくよく考えてみれば、わざわざ小さなサイズの野菜をたくさん買うよりも、大きなサイズの野菜を必要なだけ買う方が効率はいいですよね。
お得に感じる詰め放題ですが、買ったあとに使い切れないなどと後悔しないように、通常のバラ売りや袋詰めのものを買うのとどちらが自分にとって都合がいいのか、よく考えましょう。
ただし、 店によっては通常のバラや袋売りと同様のサイズのものを使用していることも ありますから、その点を一度チェックしてみるといいかもしれません。
袋のサイズも重要!必ずしも得とは限らない?!
そして商品だけではなく商品を詰める袋にも、からくりが隠されています。
なぜなら 詰め放題の企画は、「ある袋に対して商品がどれくらいの量・価格分入るのか?」という点をも考慮して構成されている からです。
いくら利益度外視とはいえ、正直なところできる限り赤字は最小限ですませたいのが会社側の本音です。
商品の原価や売価そして詰め放題の設定価格をもとに、これくらいの量なら提供しても大丈夫だろうというラインを探っていきます。
ちなみにスーパーの詰め放題の価格は、ものにもよりますがほとんどワンコイン以下と比較的安価に設定されています。
もし1回500円の詰め放題だとしたら、最大5個しか入らないのではお客さまにとってあきらかに損ですし、かといって最大20個も入れられたら店側の損益が大きくなってしまいます。
ではここで、お客さまも納得できて店側もできるだけ最小の損益でおさえられそうなラインは何個なのかといいますと…最大15個になります。
50円×15個=750円ですから、500円の参加費を払ってもお客さまは250円分得をしますし、店側としても原価38円×15個=570円で、若干ではありますが利益を出すことができます。
なので、商品を15個前後詰められるような袋を使用すればいいことになります。
(実際の計算はこんな単純明快ではありません)
さて、問題はここからです。
良心的な店だと上記のようにお客さまがちゃんと得をするように考えるのですが、逆に損をするように考えるところも あります。そう、商品を詰められる量が少ない袋をあえて使っていくわけなんですね。
詰め放題は必ずしも得するわけじゃない詰め放題に参加するときには、とてもそんな部分までお客さまは計算しませんしできませんから、一見するとまさか損をするだなんて思いもしないわけですよ。
ところが家に帰ってみると、普通にバラ売りで買う方が得だったということに気づくわけなんです。
再び上記のジュースを例に出しますが、袋が小さく10個未満しか詰められなかった場合、500円の参加費を払うよりも、バラで買う方が特になってしまいます。
一見するとお得にみえる詰め放題ですが、 袋にいくつ詰められるのかという部分もチェックしなければ、損をする可能性がある というわけなんです。
お客さまの立場からするととっても楽しい詰め放題ですが、その裏側はこんなにも計算しつくされているだなんて、驚きではないでしょうか。
まさか商品や袋にまで店の思惑が及んでいるとは、とても考えられませんよね。
詰め放題は自分で袋に商品を詰めていくというイベント性が重視されています。
そのため損得を考えながら詰めていっても、なんらおもしろくありませんし、考えすぎるとドツボにはまってしまいます。
損得は考えず袋に限界まですきまなく、どれだけ多く詰められるかを競う一種のパズルゲームだと思えば楽しめることでしょう。