多能工とは一人で複数の作業をこなすこと(またはその人)を指し、人手不足な小売や飲食業界で求められているスキルの一つです。
反対に1つの作業を専属ですること・人を指す言葉は単能工といいますが、あまり使うことはありませんね。
さて多能工ができる人材は、会社からはとても重宝されています。
しかし実際に作業をする従業員にとっては、はたしてメリットがあるのでしょうか?
今回は多能工のメリット・デメリットについて、詳しくみていくことにします。
多能工(部門かけ持ち)のメリット
1つの作業(部門)だけでいい単能工と異なり、複数の作業や部門をかけ持たなければいけない多能工。
いかにも大変そうで、メリットなんて一つもなさそうに思えますよね。
しかし、多能工ならではの意外なメリットもあります。
単能工(1つの部門専属)よりも、時給が高いことも
基本的に 多能工は、単能工より時給が高くなっていることが多い です。
その理由は、 複数の仕事をしている能力を給与に反映している からです。
しかし最近では人手不足などの理由から、一人が複数の仕事をすることが当たり前になってきています。
飲食業ではもうすでにそうなっているところも多く、むしろ未だにホールとキッチンが明確に分かれているほうが少数となりつつあります。
このように従業員全員が多能工化している店では、もちろん単能工の概念自体がありませんので、時給に差がつくこともありません。
そのため時給の面だけを考えると、部門が独立していて、かつ多能工を求められるような職場を選ぶ必要があるといえるでしょう。
いろいろたくさん作業をするため、退屈しない
いろいろな作業をしなければいけないのは、やはり大変ですし疲れます。
しかし とにかく退屈なのはいやだ、忙しいほうがいいという人にとっては、多能工という働き方がうってつけ といえるでしょう。
なぜなら いろいろな作業をすることによって、時間が早くすぎる からです。
一つのことばかりずっとしていると、流れ作業になってしまうものですが、さまざまな作業をすることによって、つねに頭をフル回転しなければなりません。
そのため退屈するような余裕もなく、あっという間に時間がすぎていくというわけです。
さまざまな仕事を覚えることで、つぶしがきくようになる
多能工でつちかったスキルは今の職場だけでなく、将来的に他のところでも役に立ち、つぶしがきく ようになります。それも当然でのことで、 できる事柄が多いほど仕事の選択肢が広がる からです。
たとえばホールとキッチンの兼任をしていて、レジ打ちも調理補助もできるのであれば、飲食業のみならず小売業やサービス業にもその経験を活かすことができます。
選択肢が多ければ多いほど、よりよい待遇を求めてより好みすることもできるようになります。
つまり多能工をすることは、将来の自分にとってすごくプラスになるといえるでしょう。
多能工(部門かけ持ち)のデメリット
多様な仕事をこなさなければならない多能工。
メリットよりもデメリットのほうが多そうですが、実際はどうなのでしょうか?
それぞれの部門で責任を求められる
多能工は一つの部門専属ではないので、単能工よりも責任に対する重圧が分散されがち です。わかりやすく言うなら、他の部門に応援に行っているという感覚で、広く浅く仕事をすればいい、深い責任は専属の人(単能工)に任せればいいと思ってしまうのです。
しかし、 他の人からすればそんなことは関係ないため、作業をしているそれぞれの部門ごとの責任を多能工には求められる のです。
もしかしたらこのことは、多能工をしていくうえで一番ツラいことかもしれません。
なにせ場合によっては、あちらからもこちらからも非難されることもあるからです。
こんなときは単能工なら責任を負うのは一つの部門でいいので、気が楽でいいなと思ってしまいます。
多くの人と関わる必要があり、人間関係が複雑になる
部門をかけ持つことで多くの人と関わりを持つと、人間関係が複雑に なっていきます。しかも 職場での人間関係ですから、さまざまな方面に気を配る必要があり、すべての人と仲良くやっていくのは至難の技 といえるでしょう。
たくさんの人と交流すると、うれしいことや楽しいこともありますが、それ以上に悪いことや悲しいこともついて回るものです。
万が一批判や愚痴をうっかりこぼしてしまうと、自分が知らないところで共有されていて、肩身が狭くなってしまうこともあります。
また多くの人と関わっているがゆえに、大問題に発展する可能性も出てきます。
一つの部門専属なら、その部門の人たちとだけ仲良くしていればいいですが、多能工ですとそんなわけにはいかないというわけです。
覚えることが多いため、慣れるまで大変
多能工でツラいことの一つに、 それぞれの仕事を覚えてしまうまでがとても大変 ということがあげられます。
なぜ大変かというと、 単純に覚えることが多い からです。
特に、新人でなにもわからないうちから多能工にさせられた場合の労力は、想像を絶します。
せめて一つの部門の仕事を一通り覚えてからでなければ、違う部門の仕事なんてとても身に入るわけがないのです。
たとえば飲食業ではホールを覚えてからキッチンというように、一つをマスターしてから、次のことを覚えさせていますが、これはとても理にかなっています。
いっぽう小売業だと、レジと品出しを同時進行で覚えさせられるところが結構あります。
求人には品出し担当と書いてあったのに、実際はレジも兼任するはめになったというケースがわかりやすい事例でしょうか。
この場合はレジの仕事が嫌だからという理由もあるでしょうが、負担が増えるのが嫌で辞める人も多くなっています。
精神的にも肉体的にも、負担が大きい
先述にも関連しますが、 こなす作業が多くなればなるほど、精神的に肉体的にも負担がかかります 。
肉体的な疲れはもちろんとして、人間関係での精神的な疲れもかかってきますから、なかなかのツラさです。
ただそれも慣れるまでが問題であって、慣れてしまえばたいして負担とも感じなくなってきます。
やはり仕事を覚えきるまでの辛抱だといえるでしょう。
こうしてメリット・デメリットの双方をみてみると、やはりデメリットのほうが多い気もしますね…。
そのためか正直なところ、多能工を自分から進んでやりますという人なんていません。
逆に会社のほうが多能工を推進していて、仕方なくやっているという人ばかりです。
多能工は会社からすれば一人で何役もこなしてくれるのですから、人件費削減にはもってこいの制度なのですよ。
みんなが多能工になれば、最小限度の人間で事足りるのですから。
それにともなって人手不足が深刻な業界ほど、ますます多能工が当たり前になっていくのではないでしょうか。
最後に…多能工を経験した私の感想としては、なんだかんだいっていい経験になったけれど、もう二度としたくはないですね。